社会保険の手続きは、企業運営に欠かせない重要な業務のひとつです。
従業員の入退社や産休・育休といったライフイベントに応じて発生する届け出を、正確かつ迅速に行う必要があります。
しかし、法改正によって必要書類や手続きの内容が複雑化することもあり、担当者にかかる負担は少なくありません。
本記事では、社会保険手続きにおける主な課題と、解決のための具体的な対策・サービスについて詳しく解説します。
社会保険手続きの代行サービスと、その利用の流れについても紹介します。
社会保険手続きの課題
社会保険手続きには、法改正対応の複雑さやセキュリティリスクへの対策などの課題があり、企業は専門知識をもつ担当者を配置する必要があります。
専門担当者を配置したうえで、企業はどのような課題に取り組むべきでしょうか。
複雑な法改正への対応
社会保険制度は定期的に法改正が行われるため、改正後の法令や届出様式への対応が必要です。
改正内容を把握したうえで社内規程や手続きを修正する作業は担当者への負担が大きく、知識不足や情報の遅れによって対応を誤るリスクがあります。
その結果、企業全体のコンプライアンス体制が問われる可能性もあります。
手入力の多さとミス
社会保険の手続きでは、被保険者の情報や給与データなど、多くのデータを直接手入力する必要があるため、転記ミス・入力漏れ・確認漏れといった人的ミスの発生に注意しなければなりません。
複数のシステムを併用している企業では、手入力したデータの整合性を確認する作業も発生します。
手入力の頻度やミスが重なると業務効率が低下し、書類の不備や差し戻しが発生する可能性があります。
セキュリティリスクの対策
社会保険手続きでは、従業員のマイナンバーや給与情報などの機密データを扱うことから、情報漏えいのリスクに注意が必要です。
一例として、書類の保管や電子データの管理が不十分な場合、紛失・盗難・不正アクセスによる外部流出などが挙げられます。
企業には、システムのセキュリティ強化やアクセス権限の厳格化など、セキュリティリスクの把握とともに継続的かつ的確な対策が求められます。
人材やノウハウの不足
社会保険手続きを正確に行うためには専門知識が求められますが、実務経験者などの専門人材を抱えていない企業も少なくありません。
専門知識をもつ担当者が異動や退職をすることでノウハウが途絶えるなど、属人化による知識の偏りや引き継ぎの難しさも課題といえます。
ノウハウが整っていないことで新任の担当者が制度の理解に時間を要し、結果として現場での対応に遅延やミスが生じるなど、人材やノウハウ不足は組織全体へのリスク要因にもなります。
社会保険手続きの課題解決策
社会保険手続きの課題解決は、単なる業務改善にとどまらず、組織全体の生産性向上や人材育成にもつながります。
特に、体制の見直しや新しいツールの導入・利活用を図ることで、法令遵守や安定した運用が可能です。
まずは実現可能な範囲から段階的に取り組み、継続的に改善を図ることが重要です。
人員補充・人事配置の見直し
人材不足への対応として、専門知識を持つ人材の採用や育成を進めることが重要です。
業務の分担を再設計し、担当者の負担を軽減する体制を整えることで、業務の「質」と「スピード」の改善を図ることができます。
人材に対しては定期的に研修を行い、制度改正への対応力を高めていく方法が効果的です。
OJT(職場内訓練)や資格取得支援制度の導入も、社内における専門人材の育成に貢献します。
人員配置の見直しは人数調整だけではなく、業務量やスキルの偏りを是正する取り組みも重要です。
チームやプロジェクト全体の生産性を高めるための戦略的取り組みとして実施することが望まれます。
業務の無駄を減らす
業務フローを可視化し、重複しやすい作業や不要なプロセスを削減することで、業務の効率化が図れます。
たとえば、紙ベースの書類から電子申請への移行や、社内システムとのデータ連携の強化がその一例です。
電子化や自動化をうまく取り入れることで、手入力や手間のかかる作業を減らし、正確かつスムーズな処理が可能になります。
複雑な業務はマニュアルやチェックリストを整備し、誰もが一定の品質で業務を遂行できる体制を整えることが重要です。
さらに、一度作成したマニュアルやチェックリストは業務の状況に合わせて見直しを行い、アップデートすることで、新しい情報のまま引き継ぎが可能になります。
アウトソーシングを検討する
自社での対応が難しい場合は、社会保険手続きを専門に行う外部業者への委託も有効です。
社会保険の専門家が法令に基づいて処理を行うため、法的リスクの軽減やコア業務に注力できる環境が整えられるでしょう。
全業務を委託せず、部分的に任せる「セミアウトソーシング」という方法もあります。
セミアウトソーシングは、コストを抑えて社内ノウハウを保持するため、費用対効果のバランスに優れた方法です。
一方で、委託にかかるコストや情報共有の手間などが発生するため、委託範囲は明確化する必要があります。
業者の選定時には、社会保険手続きに関する実績・セキュリティ体制・対応力やスピード感を慎重に比較しましょう。
契約後も定期的に業務報告や進捗確認を行い、サービスの品質を維持することが大切です。
社会保険手続き代行サービスとは?
社会保険手続き代行サービスは、企業が行う社会保険関連の事務手続きを社会保険労務士などの専門事業者が代わりに行うサービスです。
法改正や複雑な申請を代行し、企業の事務負担を軽減することを目的としています。
従業員の入退社や産休・育休といったライフイベントに伴い、さまざまな届出が必要になりますが、これらの手続きを一元的に管理できる点もサービスの特徴です。
専門家に煩雑な業務を委ねることで、企業は自社のリソースをコア業務に集中させられます。
サービスの内容
社会保険手続き代行サービスの主な業務は次のとおりです。
- 健康保険
- 厚生年金の加入や喪失手続き
- 扶養変更、産休・育休手続き
- 労災保険関連申請
サービスには定期的な社会保険料の見直しや、行政調査への対応支援も含まれます。
近年では電子申請への対応やマイナンバーの管理代行を行う業者も増えており、企業の規模や業種に合わせて柔軟にサービスを提供しています。
各種帳票の作成・保管や、クラウドを活用した手続き進捗の可視化など、利便性向上を図るサービスも増えています。
メリット
専門家が法令遵守に基づいて手続きを行うため、人的ミスや遅延リスクを減らすことができます。
社内で煩雑な書類作成や提出業務を行う必要がなくなるため、担当者の負担も軽減されます。
法改正への対応が迅速に行えるため、企業のコンプライアンスが強化され、業務効率化によるコスト削減や、従業員満足度の向上も期待できるでしょう。
さらに、専門家による正確な処理は、行政からの指摘や修正対応のリスクを低減します。
デメリット
業者によってサービス品質に差がある場合、対応スピードや対応範囲が異なることがあります。
契約範囲が明確になっておらず、想定外の追加対応を求められるリスクにも注意しましょう。
従業員の個人情報を外部の業者に預けるため、情報管理についてのセキュリティ体制が整っているかどうかを確認しなければなりません。
事前に信頼ができる業者かどうかを比較し、詳細な打ち合わせと検討を行うことが大切です。
外部に委託すると社内にナレッジや経験が蓄積しにくくなり、専門人材の育成や担当者のスキル維持が難しくなる点にも注意が必要です。
社会保険手続き代行の最新事例
ここでは、ボッシュエンジニアリング株式会社・KGアンドカンパニー株式会社が社会保険手続き代行サービスを利用した事例を紹介します。
ボッシュエンジニアリング株式会社
ボッシュエンジニアリング株式会社は、ドイツを拠点とする自動車関連会社です。
経理業務のアウトソーシングでは、3名のスタッフが毎月の支払いや請求書の発行、記帳業務に携わっています。
KGアンドカンパニー株式会社
KGアンドカンパニー株式会社は、決済システムの開発・導入を行っている企業です。
日本国内の関連会社7社に加えて、アメリカ合衆国・マレーシア・エストニアの関連会社を含めた計10社が仕訳・記帳・経費精算などの経理業務全般をアウトソーシングしています。
社会保険手続き代行サービスの流れ
代行サービスは申請代行にとどまらず、企業の法令遵守と事務効率化を総合的に支援するものです。
一貫したサポートを行うために、契約前のヒアリングから始まるケースが一般的です。
はじめに企業の現状や課題、対象となる手続き範囲を確認したうえで業務範囲を決定します。
その後、委託契約を締結し、必要な従業員データや過去の手続き情報を安全な方法で共有します。
業者はその情報をもとに入退社や扶養変更、給付申請などの手続きを実施し、電子申請システムを利用して各種機関へ届出を行う流れです。
手続き完了後は申請結果の報告や関連書類の管理を行い、定期的な報告・相談を通じて制度改正や業務改善にも対応していきます。
社会保険手続き代行の特徴を比較して選ぶ
今回は、社会保険手続きの課題と代行サービスの特徴・メリットについて紹介しました。
日本国内においては、社会保険制度は定期的に見直しや改正が行われるため、内容を正しく把握しておかなければなりません。
企業の規模や業務内容によっては、担当者にかかる負担が大きくなるため、負担軽減には代行サービスの活用がおすすめです。
iAPの経理アウトソーシングは、経理業務全般の代行に加えて、経理業務の改善提案や国際会計・税務にも対応しています。
経理・申請業務を効率的に進めるために、ぜひアウトソーシングサービスをご活用ください。

