経理業務のアウトソーシングを検討している方に向けて、海外進出におけるトラブル事例と経理サポートについて解説します。
企業の海外進出にはさまざまな問題が生じがちですが、その中でも特に多いのが経理業務におけるトラブルです。
日本とは会計基準や法律が異なる国において、ミスのない正確な経理を行っていくことは簡単ではありません。
そこで今回の記事では、海外進出におけるトラブル事例と、解決のための経理サポートサービスについてご紹介していきます。
参考にしていただければ、国ごとの会計基準に沿った正確な経理を行えるようになり、子会社の状況も正しく把握できるようになるでしょう。
海外進出の経理に関するトラブル事例
まずは海外進出の際に実際に起きた経理に関するトラブル事例について7つご紹介します。
事例①現地の税法や会計基準を理解できない
よく見られるのは、現地の税法や会計基準を理解できないトラブルです。
海外の税率や記帳ルール、決算義務は日本とは異なります。
日本の感覚で経理を行っていると、現地の監査や金融機関への説明が難しくなることがあるでしょう。
特に複数の国に進出する場合は、国ごとのルールを理解することに苦労しがちです。
税法や会計基準を覚えなければならないことは、海外進出において経理のトラブルを引き起こす要因となります。
事例②為替差損益の処理を誤って決算数値にズレが生じる
為替差損益の処理をミスしてしまい、決算数値にズレが生じるケースもよく見られます。
海外進出をすると親会社と子会社の債権・債務において為替変動の影響が生じます。
資産評価が変動すると、換算タイミングによって為替差損益が生じ、決算時に評価損益が生じてしまうことも。
為替の変動は決算時のミスだけでなく、通常時のキャッシュフローにも影響を与える可能性があります。
リスクを回避するための手段を検討しておくべきです。
為替差損益を考慮しながら処理を行うことを常に意識しましょう。
事例③親会社と子会社の取引価格(移転価格)で税務調査を受ける
親会社と子会社の取引価格において、税務調査を受けることがあるのもトラブルのひとつと言えるでしょう。
海外進出の際には、日本にある親会社が現地の子会社に対して貸付を行うことがあります。
しかし貸付に対する利息が親会社と子会社の両方に対して課されるリスクがあることに注意してください。
さらに子会社が据えられた国によっては、貸付の金利が高すぎる、低すぎるなどと判断されることも考えられます。
場合によっては、不当に利益を移転したとみなされることもあるでしょう。
その場合は損金算入できなくなったり、追徴課税や罰金などのペナルティを課されることもあります。
子会社の国の税制を理解して、税務調査を回避できるよう対策を取ることが必要です。
事例④英語の報告書作成にコストがかかる
経理報告をする際に、英語の報告書作成にコストがかかってしまうことがあります。
海外に向けて報告書を作成するには、日本語ではなく英語を使用するのが基本です。
しかし経理に関する情報は専門的であるため、英語で示すには専門知識が必要となります。
そこで英語翻訳サービスを利用するなどの対処法が考えられますが、サービスを利用するにはコストが必要です。
そのため報告書の作成にコストがかかってしまうことがあり、その分のコストも予算に含めなければならなくなります。
事例⑤会計ソフト異なるためデータを統合できない
日本と海外での会計ソフトが異なるため、データを統合できないトラブルもよく見られます。
そもそも日本と海外とでは経理処理をするためのフォーマットが違うはずです。
言語の壁もあり、同じ会計ソフトを利用できず、データの統合は簡単ではありません。
子会社の経理状況を把握できないこともあるでしょう。
会計ソフトが異なることでデータを統合できず、子会社の実態や経理状況が把握しにくくなるトラブルが起こりがちです。
事例⑥現地スタッフとのコミュニケーション不足で処理が遅延する
経理トラブル事例のひとつとして、現地スタッフとのコミュニケーションが取れず、処理が遅延することも考えられます。
日本の親会社と海外の子会社間には距離があり、容易にコミュニケーションを取ることができません。
さらにひとつ前の項目で解説したように、会計ソフトの書式が異なり、状況が見えなくなることもあるでしょう。
そこで発生するのが親会社での経理処理の遅延です。
リアルタイムに処理ができないことから、業務が遅延することもあり得ます。
事例⑦専門知識が不足して監査に対応できない
最後に、専門知識の不足によって監査に対応できなくなるトラブルについてです。
監査の対応に苦慮するトラブルは、最初に解説したように国による経理ルールの違いにより生じます。
現地の監査は、現地の経理ルールに基づいて実施されます。
また内部での監査も行いにくくなります。
子会社から渡される情報量が不足することによって、十分な監査が行えなくなることがあるためです。
そのため第三者機関からの監査だけでなく、内部監査への対応も難しくなることがあるでしょう。
海外進出の経理サポートとは?
海外進出の経理サポートとは、海外にある企業の税務・会計業務をアウトソーシングによって請け負うサービスです。
経理サポートは海外進出においてトラブル事例でご紹介したような事態を引き起こさないために欠かせません。
それではどのようなサービスなのか、利用の流れも含めてみていきましょう。
サービスの内容
経理サポートには次のようなサービスが含まれます。
【サービス内容】
- 本社へのレポート提出
- 会計ツールによる記帳代行
- 売掛・買掛の管理
- 内部監査・会計監査への対応
- 納税に関する申請
- 親会社から海外子会社への指示内容に対応
財務や経理、会計業務全般に対応するのが経理サポートです。
トラブルが多い海外進出では、経理サポートがスムーズな業務遂行に欠かせない存在といえます。
サービスの流れ
サービスを利用するための流れについても見てみましょう。
【サービス利用の流れ】
- 利用を検討する
- 現状を把握して課題・問題点を洗い出す
- 適したサービスの内容や対応範囲を提案する
- 導入計画をデザインして責任者を選定する
- 業務フローをドキュメント化しKPIを設定する
- 現行体制からの引き継ぎを行う
- パフォーマンスの評価を行い改善していく
サービス開始前に、現状の課題や問題点を洗い出し、それらを踏まえてサービスを提案します。
利用が決定されたら計画を作成し、責任者を選定したうえで業務フローをドキュメント化したりKPIを設定したりなど、より具体的にサービスの内容を詰めます。
すでに現行体制が築かれているようであれば引き継ぎを行い、サポート体制を構築。
その後は業務内容を評価しながら、より改善できるようプロセスを見直しながらサポートを続けます。
サービスのメリット
経理サポートを利用するメリットは次のとおりです。
【メリット】
- 国ごとの税法に合わせた適切な経理処理が可能となる
- 法的リスクを回避しやすくなる
- 海外支店の立ち上げコストを削減できる
- 現地スタッフのトレーニングが不要となる
- 経理体制構築のための時間が不要となる
海外進出において経理サポートを利用すると、トラブル事例にあるような法的リスクを回避しやすくなることが最大のメリットです。
国ごとの法律や税法に基づいて経理処理を行うため、為替差損益の計算ミスも防げます。
また現地スタッフを雇用する必要がなくなり、時間と手間を省けることもメリットのひとつです。
経理体制を構築するための時間を削減できるため、事業運営開始までの期間を短縮できます。
以上のように経理サポートを利用すると、経理におけるミス軽減、コスト削減、事業運営開始の早期化などさまざまなメリットが期待できるでしょう。
トラブル事例の多い海外進出には経理サポートを
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、トラブル事例の多い海外進出における経理サポートの有用性がご理解いただけたと思います。
法律が違い、為替差損益が生じる可能性がある海外の経理処理は簡単ではありません。
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