経理業務の人手不足や属人化、法改正への対応に悩む企業では、外部の専門事業者へ業務を委託する経理BPOが注目されています。
経理BPOは、仕訳入力や請求書処理などを任せるだけでなく、業務フローの見直しや標準化、クラウド会計の活用まで支援する仕組みです。
本記事では、経理BPOについての基本情報や注目される背景、導入のメリット・注意点、選び方、導入手順を分かりやすく解説します。
経理BPOとは?
経理BPOは、経理業務を外部へ委託するだけでなく、業務プロセスの見直しや標準化、改善まで支援するサービスです。
一般的なアウトソーシングとの違いを理解するため、まずはBPOの意味や経理BPOの特徴を確認しましょう。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の意味
BPOとは、企業が特定の業務プロセスを専門事業者へ継続的に委託し、運用や改善まで任せる仕組みです。
単発の作業だけを外注する方法とは異なり、業務手順の設計、標準化、品質管理、進捗管理なども委託範囲に含まれる場合があります。
また、経理や人事、総務、情報システムなど対象は幅広く、自社の負担を抑えながら業務効率や生産性の向上を目指せる点が特徴です。
ただし、具体的な支援範囲や責任分担は契約内容によって異なるため、成果物や対応期限まで事前に確認しましょう。
経理BPOの定義と特徴
経理BPOとは、仕訳入力や請求書処理などの経理実務に加え、業務フローの設計や標準化、改善まで外部へ委託する仕組みです。
担当者の退職や人手不足が生じても、複数人による運用体制を整えやすく、経理業務の継続性を高められます。
また、クラウド会計や各種システムを活用し、処理手順や確認方法を見直せる点も特徴です。
ただし、対応品質や改善提案の内容は事業者ごとに異なるため、導入実績や担当体制、業務開始後の報告方法まで確認する必要があります。
可視化すれば、月次締めの遅れや確認漏れも把握しやすくなるでしょう。
経理BPOが注目される背景と市場規模
経理BPOが注目される背景は、人材不足や働き方改革、DXの推進、法令対応の複雑化などです。
経理部門の負担を抑えながら業務品質を維持する手段として導入が検討されています。
ここでは、需要が高まる主な理由と市場の動向について解説します。
働き方改革による業務見直しの必要性
働き方改革への対応では、長時間労働を抑え、多様な働き方を実現するために、経理業務の進め方を見直す必要があります。
紙の書類や手入力に依存した業務は、担当者の負担が大きく、在宅勤務にも対応しにくい傾向です。
また、経理BPOを活用すると、定型業務を外部へ移しながら、処理手順の標準化やデジタル化を進めやすくなります。
ただし、委託後も資料提出や承認など自社に残る作業があるため、導入前後の業務時間を比較し、実際の改善効果を確認しましょう。
改善後の手順を社内へ共有し、継続して運用できる状態に整えることも必要です。
少子高齢化や採用環境の変化による人材確保の課題
生産年齢人口が減少するなか、企業や地域によっては経理経験者の採用・定着に課題を抱える場合があります。
特に、少人数の企業では担当者の退職や休職が業務停止につながりやすく、採用後の教育や引き継ぎにも時間が必要です。
経理BPOを利用すれば、外部の複数人による運用体制を活用し、採用だけに頼らず経理機能を維持しやすくなります。
ただし、自社にも確認や承認を担う担当者を置き、委託先と円滑に連携できる体制を残すことが大切です。
業務手順を文書化し、担当変更時にも引き継げる状態を整えておきましょう。
DX推進と電子帳簿保存法への対応
経理BPOが注目される背景には、DXの推進と電子帳簿保存法への対応があります。
同法は帳簿や書類の電子保存に関する要件を定めており、電子取引データは原則として電子データのまま保存しなければなりません。
なお、経理BPOでは、クラウド会計や請求書管理システムの導入、保存ルールや検索方法の整備を支援する場合があります。
ただし、サービスの利用だけで法令対応が完了するわけではありません。
自社の取引形態や保存方法を確認し、必要に応じて税理士などの専門家とも連携しましょう。
拡大を続ける経理BPO市場の現状
国内BPO市場全体は拡大傾向にあり、その中で経理を含む間接業務の外部委託も選択肢が広がっています。
提供事業者も、大企業向けの大規模運用から、中小企業やスタートアップ向けのオンライン支援まで多様化しました。
また、記帳代行だけでなく、請求管理、月次決算支援、システム導入、業務改善まで対応するサービスもあります。
ただし、市場規模の数値は調査会社ごとに対象範囲や算定方法が異なるため、引用する場合は調査条件、公表年、出典を併せて確認することが重要です。
経理BPOを導入する5つのメリット
経理BPOの導入により、人材確保の負担軽減や業務の標準化、コア業務への集中などが期待できます。
ただし、効果は委託範囲や運用体制によって異なるものです。
ここでは、代表的な5つのメリットと、効果を得るための条件を解説します。
採用に頼らず経理体制を補完できる
経理BPOを活用すると、専任担当者を新たに採用する場合と比べて、人件費や採用費、教育費を抑えられることがあります。
業務量に合わせて委託範囲を調整できるため、繁忙期だけ支援を増やす運用も可能です。
ただし、処理件数や確認作業が多い場合は、追加料金によって総額が高くなることもあります。
そのため、給与だけで比較せず、採用活動や引き継ぎ、管理工数、システム利用料まで含めた年間の総コストを算出し、本当に削減効果が得られるか確認しましょう。
深刻な人材不足を解消できる
経理BPOは、経理経験者を採用しにくい企業が、外部の専門スタッフを活用する方法の1つです。
担当者の退職や休職が生じた際も、複数人で対応する事業者を選べば、業務を継続しやすくなります。
また、採用や教育にかかる時間を抑え、必要な業務から段階的に委託できる点もメリットです。
ただし、自社の確認担当者まで不要になるわけではありません。
問い合わせ対応や承認、取引内容の説明を担う人員を残し、委託先と連携できる体制を整えましょう。
委託後も社内側の役割を明確にし、定期的に体制を見直してください。
経理業務の属人化・ブラックボックス化を緩和しやすい
経理BPOを導入する際に、業務手順や判断基準を文書化すれば、特定の担当者だけが処理方法を把握する属人化を緩和できます。
複数人で業務を担当し、作業履歴や月次報告を共有する運用は、処理状況の可視化にも役立つでしょう。
ただし、委託先へ任せきりにすると、外部で新たなブラックボックス化が生じる可能性があります。
そのため、手順書や会計データを自社でも保管し、担当変更や契約終了時にも引き継げるよう、定期的に処理内容を確認する管理体制を維持しましょう。
担当範囲を確認し、特定の人だけに情報が偏らない運用を続けましょう。
コア業務や経営戦略に集中できる
仕訳入力や請求書処理、入金確認などの定型業務を経理BPOへ委託すると、社内の担当者が経営分析や資金繰り、事業計画などへ時間を配分しやすくなります。
特に、経営者や管理部門が経理実務を兼務している企業では、負担軽減が期待できるでしょう。
ただし、資料提出や承認、問い合わせ対応など、自社に残る業務もあります。
導入前後の作業時間を測定し、外部化によって生まれた時間を営業活動や商品開発など、どの業務へ振り向けるか決めることが大切です。
委託による効果を定期的に振り返り、役割分担を調整することも必要です。
専門スタッフによる品質の安定が期待できる
経理BPOでは、会計ソフトの操作や経理実務に詳しい担当者へ業務を委託できるため、処理手順の標準化や品質の安定が期待できます。
複数企業への支援経験をもとに、業務フローやシステム活用の改善提案を受けられる場合もあります。
ただし、担当者の経験や保有資格は事業者によって異なり、すべての処理が自動的に正確になるわけではありません。
そのため、担当体制や確認工程、業種経験、ミス発生時の対応方法を確認し、自社でも成果物を点検する仕組みを残しましょう。
定期的な報告や改善提案の内容も、契約前に確認しておくと安心です。
経理BPO導入前に知っておきたいデメリットと注意点
経理BPOには多くの利点がある一方、情報漏えいや認識のズレ、社内ノウハウの低下、費用増加などのリスクもあります。
導入後のトラブルを防ぐために、本項では想定されるデメリットと必要な対策について詳しく解説します。
情報漏えいのリスクとセキュリティ対策
経理BPOでは、取引先情報、口座情報、給与データなどの機密情報を外部へ共有するため、漏えいや不正アクセスへの対策が欠かせません。
また、委託先を選ぶ際は、通信や保存時の暗号化、アクセス権限、端末管理、入退室管理、従業員教育、再委託先の管理を確認しましょう。
ただし、ISMS認証は判断材料の1つですが、取得だけで安全が保証されるわけではありません。
秘密保持、事故発生時の報告期限、損害への対応、契約終了後のデータ削除方法も契約書へ明記することが重要です。
委託先とのコミュニケーション不足による認識ズレ
委託先との情報共有が不足すると、処理の優先順位や成果物、報告方法について認識のズレが生じる可能性があります。
たとえば、請求書の締め日や確認が必要な取引の連絡方法が曖昧な場合、処理遅延や手戻りにつながります。
対策として、業務フローや担当者、回答期限、成果物の形式を具体的に決めましょう。
また、定例会議やチャットを活用し、課題や変更点を早めに共有することも大切です。
合意内容は口頭だけでなく文書に残し、変更履歴も確認できる状態で管理してください。
運用開始後も振り返り、連絡方法や役割分担を改善しましょう。
社内にノウハウが蓄積されにくい
経理業務を外部へ広く委託すると、社内担当者が仕訳や月次締めを経験する機会が減り、知識が蓄積されにくくなる場合があります。
委託先の変更や内製化を行う際、自社が処理内容を把握していなければ、引き継ぎに時間がかかるでしょう。
たとえば、対策として業務手順書、勘定科目の判断基準、月次報告を共有し、自社にも確認担当者を置きます。
また、定期的な説明会や改善報告を契約に含め、担当者の交代時にも対応できるよう、必要な管理能力と情報を社内に残すことが重要です。
委託先から受け取る資料の形式や保管場所も統一しておきましょう。
運用プラン次第で費用が割高になるケース
経理BPOの費用は、料金体系や委託範囲、処理件数によって変わります。
従量課金制では、繁忙期に仕訳や請求書が増えると費用が膨らみやすく、月額固定制でも対象外業務の追加によって総額が高くなる場合があります。
そのため、契約前に月間件数や季節変動を整理し、通常月と繁忙月の料金を試算しましょう。
さらに、初期設定や修正、特急対応、システム利用料、解約時のデータ返却費用も含めて複数社の見積もりを比較し、年間の総額で判断することが大切です。
業務量が変化した際にプランを変更できるかも事前に確認してください。
失敗しない経理BPOサービスの選び方7つのポイント
経理BPOは、事業者によって対応範囲や料金、支援体制が異なるものです。
価格だけで判断すると、必要な業務が対象外になる可能性もあります。
ここでは、実績、提案力、セキュリティ、契約条件など、選定時に確認したい7つのポイントを解説します。
導入実績と信頼性が十分にあるか
経理BPOを選ぶ際は、導入実績の件数だけでなく、自社と近い業種や規模、使用システムでの支援経験を確認しましょう。
また、実績が多くても、必要な業務に対応した経験がなければ、導入後に認識のズレが生じる可能性があります。
そのため、公式サイトの事例や利用者の声に加え、担当体制、業務継続計画、事故発生時の対応も確認することが大切です。
第三者認証や取引年数は判断材料になりますが、それだけで選ばず、提案内容、担当者の説明、契約条件を含めて総合的に評価してください。
自社が委託したい業務範囲をカバーしているか
経理BPOは、記帳、請求書処理、経費精算、月次決算支援など、事業者によって対応範囲が異なります。
まず自社の業務を洗い出し、外部へ任せたい作業と自社に残す承認や判断を整理しましょう。
決算や税務申告、社会保険手続きが必要な場合は、税理士や社会保険労務士が担当する体制も確認します。
なお、提案書や契約書に対象業務、成果物、締め日、責任分担、対象外業務が具体的に記載されているかを確認すれば、追加費用や対応漏れを防ぎやすくなります。
将来追加する可能性がある業務についても、対応可否や料金を聞いておくと安心です。
「指示待ち型」ではなく「提案型」の対応か
業務改善を目的に経理BPOを導入する場合は、依頼された作業だけを行うのではなく、課題を分析して改善策を提案できる事業者が適しています。
たとえば、重複入力の削減、承認フローの見直し、クラウド会計の活用など、具体的な提案があるかを確認しましょう。
ただし、提案型と表示されていても、支援内容や追加料金は事業者ごとに異なります。
導入前の相談で、自社の課題に対する提案例、実施手順、担当者、効果の測定方法まで説明できるかを見極めることが大切です。
料金体系と委託範囲が明確に示されているか
経理BPOの料金は、月額固定、従量課金、業務別料金などに分かれ、対象件数や作業内容も事業者ごとに異なります。
基本料金だけで判断せず、初期設定、資料整理、修正、特急対応、システム利用、解解約時のデータ返却に追加費用がかかるか確認しましょう。
また、請求書発行は対象でも入金消込は対象外など、業務範囲に差がある場合があります。
したがって、同じ条件で年間総額を見積もり、料金、対象件数、成果物、対象外業務を契約書へ具体的に明記することが重要です。
見積もりの有効期限や料金改定の条件についても、事前に確認しておきましょう。
セキュリティ体制やISMS認証の有無
経理BPOでは財務情報や個人情報を共有するため、委託先のセキュリティ体制を具体的に確認する必要があります。
ISMS認証の有無に加え、データの暗号化、アクセス権限、端末管理、バックアップ、従業員教育、再委託先の管理を確認しましょう。
なお、ISMS認証は情報セキュリティ管理の仕組みを審査するもので、事故が起きないことを保証するものではありません。
そのため、契約終了後のデータ削除、事故発生時の報告手順、復旧体制まで確認し、自社の管理基準と照合することが大切です。
トライアル利用ができるか
トライアルや小規模な試行導入ができるサービスでは、本契約前に処理品質や連絡のしやすさ、成果物の形式を確認できます。
特に、既存の業務フローや会計ソフトとの相性を判断するうえで有効です。
ただし、すべての事業者が無料トライアルを提供しているわけではなく、試行範囲や期間が限定される場合もあります。
対象業務、料金、使用するデータ、責任範囲、終了後のデータ削除方法を確認し、正確性や対応速度などの評価項目を事前に決めたうえで導入可否を判断しましょう。
解約条件や業務返還フローが明確か
経理BPOを選ぶ際は、契約開始時だけでなく、解約や委託先変更の手続きも確認しておきましょう。
解約予告期間、違約金、データ返却の形式、引き継ぎ支援の範囲が曖昧だと、契約終了時に業務が停滞する可能性があります。
また、会計データ、手順書、証憑原本など、返還対象と期限を明確にすることも重要です。
さらに、契約終了後のアクセス権停止、データ削除、返還作業の追加費用まで契約書に記載し、自社や次の委託先へ円滑に業務を移せるか確認してください。
次の委託先が利用できるデータ形式で受け取れるかも確かめてください。
経理BPO導入までの3ステップ
経理BPOを導入する際は、目的の整理、委託先の選定、契約と引き継ぎを段階的に進めます。
準備が不十分なまま契約すると、追加費用や業務の混乱につながるかもしれません。
ここでは、導入を円滑に進める3つのステップを解説します。
STEP1.委託目的と課題を明確にする
最初に、経理BPOを導入する目的と、現在の経理業務が抱える課題を整理します。
人手不足の解消、残業時間の削減、月次決算の早期化など、具体的な目標を設定すると、必要な委託範囲を判断しやすくなります。
また、業務ごとの作業時間、処理件数、担当者、使用システムを洗い出し、問題が生じている工程を特定しましょう。
くわえて、目的と課題を数値や事実で整理すれば、委託先へ要望を伝えやすくなり、導入後も目標に対する効果を定期的に検証できます。
優先順位を付けて課題を整理し、必須の成果と望ましい成果を分けましょう。
STEP2.必要に応じてRFPや要件一覧を作成して委託先を選定する
RFPは、委託したい業務、サービス水準、納期、セキュリティ要件などを候補事業者へ示す文書です。
複数社へ同じ条件を提示することで、提案内容や見積もりを比較しやすくなります。
また、RFPには、現状の業務量、使用システム、成果物、報告頻度、資格者が必要な業務、移行時期などを記載しましょう。
くわえて選定時は価格だけでなく、実績、担当体制、改善提案、事業継続性も確認することが大切です。
中小規模の導入では、必要事項をまとめた要件一覧でも比較資料として活用できます。
各社へ同じ情報を提供し、比較条件がずれないようにしてください。
STEP3.契約締結から運用開始までの流れ
委託先を決めたら、業務範囲、料金、責任分担、秘密保持、再委託、解約条件を契約書へ明記します。
その後、業務手順書や資料一覧を作成し、会計ソフトの権限設定、データ移行、連絡方法を整えましょう。
運用開始直後は、テスト処理や定例会議を行い、仕訳方針や成果物に認識のズレがないか確認します。
また、問題が見つかった場合の修正手順や責任者も決めておく必要があります。
段階的に移行し、一定期間ごとに運用状況と委託効果を見直しましょう。
本格移行前に一部業務で試行し、問題点を修正してから対象を広げる方法も有効です。
まとめ:経理BPOのメリットや費用を正しく理解しよう
経理BPOは、仕訳入力や請求書処理などの定型業務を外部へ委託し、業務プロセスの標準化や改善を進める手段です。
人材不足への対応、採用・教育負担の軽減、コア業務への集中などが期待できる一方、情報漏えい、社内ノウハウの低下、追加費用といった注意点もあります。
また、税務相談や税務申告は税理士業務に該当するため、資格者との連携体制も確認しなければなりません。
そのため、導入時は、目的と委託範囲を整理し、料金体系、実績、セキュリティ、提案力、解約条件を比較しましょう。
自社に残す承認業務や責任範囲まで明確にし、導入後も定期的に運用を見直すことで、経理BPOを効果的に活用できます。
経理BPOを検討していても、「どこまで任せられるのか」と迷うことがあります。
株式会社アイエーピーは、記帳や月次決算、業務フローの改善まで、企業の課題に合わせて支援します。
経理の人手不足や属人化にお悩みの方は、まずご相談ください。
□WEB:公式サイト「お問い合わせフォーム」より
□電話:03-4361-2690(平日10:00~18:00)
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